《U》
纏わりつくような熱気が消え、痛みさえ覚えるほどの冷気が一気に体を侵食していく。
遙かなる深淵へ。体は鉛のように、重く沈んでいく。
これが死という感覚か。ならば、己の堕ち往く先は地獄か。
神は、地獄は世界の底に在ると言った。そこに堕ちれば最後、二度と救われず、永遠の責め苦に苛まれるという。
そして神は人がそこに堕ちぬよう、救うためにいるとされている。
だが俺は知っている。神などこの世にはいない。天も地獄もない。ただあるのは、厳然たる生と死。
そして今、俺は着実に死を迎えようとしている。でも、俺はまだ死ねない。俺にはまだ、やらなければならないことがある。
凍て付く奔流の中で幻影の神を斬り払い、俺は遙かな光明へ、必死に手を伸ばした。
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