《V》





 村の片隅に、物寂しく広がる空き地があった。そこには何もない。昔は井戸があったが、それも既に枯れて久しく、昼間でも薄暗いこの場所に好んで来る人間はいない。

 だが、今日ばかりは違った。

 既に男が三人。そして、人目を気にしながら歩み寄ってくる男が一人。四人がいた。体型こそ違ったが、各々薄汚れたローブを纏っている。

「間違いない。奴はここにいる」

 歩み寄ってきた男のその言葉に、元からいた男の三人は小さく、だがはっきりと頷く。

「……それで、如何いたしましょう」

 自分への指示を仰ぐ部下の言葉に、三人の中央にいた、リーダー格の男は腕を組んで考え込む。

 どうしたものか……。

 これは千載一遇のチャンスだ。所詮はいざというときのスケープゴートでしかない組織の末端。その自分に、これほど大きなチャンスが巡ってくることはまずあるまい。

 もし成功させれば、どれほど甘美な蜜が吸えるようになるか。だが失敗すれば、消されるのは自分達だ。

 病葉(わくらば)は狩られるが定め。失敗は、決して許されない。

 暫時黙考に耽っていた男だったが、やがて結論を出すとローブの裾を翻し、この場から去ろうとする。

「どちらへ……?」
「お前達はアレを監視していろ。今から上に掛け合ってくる。だから、俺が帰ってくるまで絶対に手を出すな。いいな?」

 釘を刺して、この場を後にするリーダー格の男。残された三人は、黙ってその背中を見送る。だがその心中には、確かな野望が蠢いていた。

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